MemriseとQuizlet、日本語の授業ではどちらが良いか
今学期から、新たな取り組みとして、語彙を覚えるためにWebアプリを活用することにしました。
以下の2点が主な理由です。
・授業での語彙の習得度が違い、練習時に授業が滞ってしまうことがある。
・スキマ時間に効率的に語彙を覚えて欲しい。
そこで、Web上で使え、かつ、語彙リストをこちらで用意できるWeb上の語彙学習サイト(アプリ)を探していたのです。
条件として、以下の6点を考えました。
(1)語彙リストが自分で用意できること。
(2)教員側で学習者の進捗状況が把握できること。
(3)音声をこちらがわで用意できること。
(4)画像などが入れられること。
(6)(苦手なものや、過去に覚えたものの)反復練習が可能であること。(ただのフラッシュカードではないこと)
(1)〜(2)に関しては、授業で使うため必要なことです。自分が使うだけだったら、これらの機能は不要かもしれません。
(3)は、カナを見れば読み方は分かりますが、アクセントなどはどうしても把握できません。(アクセントを書くのもスマートではない気がしますし。。。)字面だけでなく、耳で覚えることが必要だと考えるためこの機能が必要だと考えました。
(4)は、画像があった方が、意味理解の助けになる場合があるためです。
(5)は、「スキマ時間で勉強できること」を目論んでいるため、寝る前や休み時間、研究の合間にできることが望ましいためです。
(6)も重視しました。Webだからできる機能が欲しいです。
上記6点を考え、取り敢えずQuizletとMemriseに絞りました。
いずれもある程度は無料で使えますが、高機能版は有料となります。
続きを読む一方的な知識提供型の教授法からの脱却を目指したい
昨年度より本格的に日本語教育にふたたび従事するようになり、日本語教育や教授法の勉強を少しずつ勉強を進めています。
とはいっても、コマをこなすことで、精一杯で、なかなか進まないのですが・・・。
一方的な知識提供型の教授法は、私が担当しているような分野には、合わないのだろうなと感じています。
ある非常勤先で担当している「文章表現」の授業では、一定以上の日本語力がある留学生と、日本で高校までの教育を受けた学生しかいないため、グループでディスカッションし、クラスで共有、コメントをするという形態で進めており、「積極的に参加しない学生がいる」「教科書などを理解するのに充分な日本語力がない学生がいる」などの不満の声は上がっていますが、学習効果としては、ある程度手応えを感じています。
ただ、特に初中級の日本語教育の現場では、なかなか実現できていないところです。
日本語の力、教えている機関の方針などさまざまな要因はありますが、後者は仕方がない一面もあるものの、前者については(私自身が)甘えているだけかもなーっと感じています。
学習していないことであっても、どんどん話すトレーニングはできるわけですよね。テンプレートを用意して、そこに、様々な語彙を当てはめていく。言えること、言いたいことベースですすめていきたいなと普段から考えています。
自分自身は,ポルトガル語や英語は文法積み上げで学んできました。ただ、ことポルトガル語に関しては、自分の言いたいこと(理解したい文章)があり、それに必要な語彙や文法を自分で調べることも並行してきました。
私が対象とする学習者も,その多くは,日本語はあくまで進学先で使ったり、研究室で使ったり,授業で使ったり,つまり使うために学習している人がほとんどです。
(日本にいる学生が対象なので,語学を趣味にしているとか,外国語もしっておきたい,という学生は,あまりいないと思います)
今学期からの取り組み
「言いたいこと」を話す練習をする
というような問題意識をずっともってはいたのですが、なかなか実現できないでいましたが、今学期からは、積極的に取り入れていこうと思っています。
ある大学の初級日本語のクラスには、専門的な教育は主に英語で受けているし、ゼミも英語主体で行われているけれども、日本での生活や研究室の同僚とのやりとりに日本語が必要という学生が来ています。
そこでは、主に、『初級日本語 げんき』(ジャパンタイムズ)という教科書を使っています。この教科書は、文法の説明が詳しく、それも英語で載っていて、(第一言語ではないにせよ)英語が得意な学生には好評です。分からないところや忘れたところを英語での説明を読みながら確認できるのがメリットです。一方、文型積み上げ式が中心であるというのは、他の多くのテキストと変わりません。
GENKI: An Integrated Course in Elementary Japanese II [Second Edition] 初級日本語 げんき II [第2版]
- 作者: Eri Banno 坂野永理,Yoko Ikeda 池田庸子,Chikako Shinagawa 品川恭子,Kyoko Tokashiki 渡嘉敷恭子
- 出版社/メーカー: ジャパンタイムズ
- 発売日: 2011/09/30
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログを見る
いままでは、これのみを中心に使っていましたが、学生からは
「研究室の人と話しが続かない」
「英語しか主に使わないから覚えられない」というコメントを貰っていました。
今学期からは、話す練習、それも「言いたいこと」*1を話す練習をしたいと考えています。
「〜が言いたい」というところを出発点とした練習も取り入れていきたいと考えています。
まずは、下記の教科書を使ってパターンに入れていく練習をして、述べたいことが口から出てくるようにします。
わたしのにほんご - 初級から話せるわたしの気持ち・わたしの考え
- 作者: 杉浦千里,小野寺志津,ボイクマン総子
- 出版社/メーカー: くろしお出版
- 発売日: 2011/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 3回
- この商品を含むブログを見る
次に、下記の本の中から、いくつか活動をピックアップして、2〜3回の授業で取り組んでいきたいと考えています。
会話の授業を楽しくするコミュニケーションのためのクラス活動40―初級後半から上級の日本語クラス対象
- 作者: 石黒圭
- 出版社/メーカー: スリーエーネットワーク
- 発売日: 2011/10
- メディア: ハードカバー
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログを見る
学生が今学期修了するときまでには、「自分の言いたいこと」を「言いたいスタイル」で言えるようにしたいと思っています。
語彙はWebアプリを活用
語彙の定着は学生によって差があります。
いままでは、課の最初や最後に語彙のテストをし、勉強は学生まかせだったのですが、語彙が出てこないと練習もままならなかったりします。(語彙の説明に時間を取られるので・・・)
そこで、今学期からはWebアプリを活用しようと考えています。
調べたところ、教員が語彙を自分で登録できて、かつ、暇な時間にクイズ形式で練習できるようなサイトがいくつかありました。その中で、
という2つのサイトが候補にあがりました。
それぞれ、語彙を入力して試してみたのですが、どうも、どちらもメリット・デメリットがありそうです。
結局、いろいろ考えたり、大学での使用事例を調べたりして、"memrise"を使うことにしました。*2
どちらの語彙サイトもAndroid/iPhoneアプリがあり忙しい学生にとってはすき間時間に勉強できて良さそうです。
これらの成果が効を奏すか分かりませんが、旧来の教え方に捕らわれず、少しずつ授業改善を図っていきたいと考えています。
日本語が言語的にマイノリティーになったことによる疎外感を気付きにつなげたい
以前、こんな記事を書きました。留学生と国内学生が共に学んでいる文章表現のクラスの話です。
クリティカル・リーディングの基礎の練習で
ここで書く出来事が起きた授業はクリティカルリーディングの基礎を学ぶ授業の2回目でした。
その前の週は、テーマや主張、主張へいたる論証をまとめ、まとめ方を練習しています。
来週は、次の書籍からの抜粋を使って、要約する予定で、同じ著者の別の本の抜粋を使って先週に続き、まとめる練習をするというのが、先週の授業でした。。
例によって、留学生も、そうではない学生もくじ引きでグループを決め練習をしました。
統制をしているわけではないので、留学生の方が多いグループや、国内学生の方が多いグループが生じてしまいます。
そうしてできたのが、留学生3名と国内学生1名のグループでした。
学生からのコメント
学生には、授業の最後にコメントを書き、提出してもらいます。
その中である学生から、以下のようなコメントが・・・
留学生3人対私の授業は辛かったです。留学生3人が内容を理解できなかったようで、終始、母語で話し合ってしまい、疎外感を感じました。
前半部分に関しては、授業の中で伝えていくしかないかなーと思っています。
難しく感じている人は、留学生であっても国内学生であっても予習をして挑むこと、というのを強くお願いするしかないかなと思っています。
学部学生が自由に履修できる授業なので、授業内での留学生に対するフォローは難しいところです。*1
「疎外感」は気付きに繋げたい
さて、後半部分に関してが、ここで、取り上げたいことです。
「終始、母語で話し合ってしまい、疎外感を感じました。」
留学生同志が母語で話しているところに、留学生の母語が分からない人が1人自分だけいる環境。
学生は不満として、取り上げています。母語で話しあったら、日本語しか分からない自分が話に参加できず、真面目に取り組もうとしているのを阻害されたような気分になると思います。こういった学生の不満も出てきて当然かなと思います。
それに、授業の方針としては、「(留学生も含めて)日本語でグループワークをしながら学ぶ」ということをかかげていますから、日本語でのグループワークをするように今後も促してはいきます。このことは、揺るぎありません。授業のやりかたを工夫して、改善をはかっていきます。
ただ、「疎外感を感じた」というのを不満としてのみ捉えるのではなく、気付きに繋げて欲しいとも思います。
日本語話者がマイノリティーの日本で、自分が言語的にマイノリティーになるという状況はなかなか実現されません。海外に行くか、外国人コミュニティに自ら入って行くことぐらいしかないかもしれません。*2
グループ内で、自分が言語的にマイノリティーになることで、日本国内にいる日本語を母語としない人たちが、同じように「疎外感を感じているかもしれない」ということへの気付きにつなげて欲しいなと思っています。
このことは、留学生が半分程度を占める授業でしか、実現できません。「留学生がいて意思疎通が難しくて面倒臭いや」ではなく言語的にマイノリティーになるということはどういうことなのか、分かって貰えるといいなと思います。
将来の仕事にも
福祉系の大学の授業での出来事だったのですが、将来社会的弱者と関わる仕事に従事する人も多いと思われます。
自分がマイノリティになるという経験を授業でできることで、将来社会的弱者がどのような思いで生きているのかに思いを馳せることに繋がるのではないか、と考えます。
将来、社会的弱者と関わるときに、このことを思い出してくれればと思っています。