Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

「美しく正しい日本語」より「やさしい日本語」

神奈川県横浜市で、「やさしい日本語」で情報提供する試みが始まるそうです。

横浜市 「やさしい日本語」で伝えるための基準初版ができました! (平成26年06月03日記者発表資料概要)

つくば市も「やさしい日本語」の情報サイトがあるけど、横浜もだって。こういう試みがどんどん広まってくると良いと思います。

「やさしい日本語」と聞いてピンとくる方は少ないかもしれませんが、とても良いことだと思います。  (やさしい日本語については、庵先生等の書籍に詳しいです。)

やさしい日本語のしくみ

やさしい日本語のしくみ

 
「やさしい日本語」は何を目指すか: 多文化共生社会を実現するために

「やさしい日本語」は何を目指すか: 多文化共生社会を実現するために

 

また、弘前大学では、やさしい日本語の解説サイトがあります。

Eラーニング版わかる!伝わる!「やさしい日本語」~基礎文法編~

やさしい日本語

「やさしい日本語」の「やさしい」は、その名のとおり簡単な日本語です。

日本語の初級や中級の学習者であっても理解できる日本語ということです。

日常の簡単な会話はできても、市役所で渡される資料は、難解なことが多いです。

これを、理解しやすい簡単な日本語でリライトすることによって、そういった人にも情報が行き渡るようになります。

多言語対応と「やさしい日本語」

私は、今までに、翻訳者として、地方自治体の多言語対応の仕事をしてきました。

守秘義務があるので、どの自治体のどの資料を翻訳してきたかは申し上げることはできませんが、政令指定都市や外国人が多く住む自治体の資料の翻訳を担当してきました。

愛知県名古屋市などでは、地下鉄の案内にも、ポルトガル語が流れたり、バス停にポルトガル語が併記されていたりします。

このように、日本に住む人で日本語以外を母語にする人にあっては、そのマジョリティである言語への多言語対応は進んできています。(今回取り上げた横浜市もそのひとつです。)

英語・中国語・韓国語(朝鮮語)・ポルトガル語スペイン語タガログ語といった言語の情報は、多くの自治体で提供されるようになってきています。

このように、多言語対応することで、日本に住む日本語を母語としない人たちにとって住みやすい環境が作られていることは事実あります。

しかしながら、英・中・韓・ポ・西・タガログといった言語を母語としない人たちも少なくないはずです。そして、英語が分かるとは限りません。また、英語を母語としないけれども英語を話すという人でも、自治体の情報に使われる英語が難しく理解できないこともあると考えられます。(たとえば一定の英語が分かる日本の人でも、法律文は難しく感じたりするのではないでしょうか。)

そのような人たちが、日本に来て、学ぶ言語はおそらく日本語です。

その人たちにとって、(もちろん母語で情報が提供できれば良いのですが)やさしい日本語で書かれた文章であれば、簡単な日本語の文型と、ことばで容易に理解できるはずです。分からないことばがあっても、辞書があれば、理解できるようになります。

「やさしい日本語」で情報が提供されることのメリットは大きいと考えられます。

NHK NEWS WEB EASY

実は、この「やさしい日本語」の取り組み、NHKもやっています。

NEWS WEB EASY

NHK NEWS WEBに掲載されたニュースを、リライトして、「やさしい日本語」で掲載するのです。

震災や有事の際に、情報が入ってこない怖さというのは、それは恐ろしいものがあります。

阪神大震災を教訓に、多言語での情報提供の試みがなされてきています。

東日本大震災を受けて、多言語対応に加えて、「やさしい日本語」での情報が流れることで、より万遍なく情報を伝えることができます。

また、「やさしい日本語」は、日本語を母語とした人にとっても役に立つはずです。例えば、留守番している最中に、地震が起きても、情報が子どもたちに届かないことがあるかもしれません。そんなとき「やさしい日本語」であれば、子どもたちが理解し、適切な行動ができるかもしれません。

「美しい日本語」より「やさしい日本語」

この「やさしい日本語」の取り組みが、広がることを望みます。

「美しい日本語」よりも、人に伝えることのできる「やさしい日本語」の方を広げていくことの方がよっぽど重要です。

つくば市の取り組み

私の住む「つくば市」は「やさしい日本語」のウェブサイトがあります。

Welcome to the City of TSUKUBA

つくば市の「やさしい日本語」サイト。こういう取り組みはどんどん広がっていくことを願う。

「やさしい日本語」のサイトは、簡単な日本語で書かれているのはもちろんですが、ルビがふられており、親切設計です。

ひらがなとカタカナだけで書かれていることで、辞書さえあれば、日本語を母語としない人や、教育を受ける機会が少なかった人などにも、情報が伝わります。

この「やさしい日本語」の取り組みが多くの自治体で広がってくるといいなと思います。