小学館『プログレッシブ ポルトガル語辞典』が発売されました
あけましておめでとうございます。およそ半年ぶりの更新です。
今年度は、授業を10コマ以上持っていることもあり、また、後期は、前期より1コマ増えたこともあり、まとまった時間が取れず、研究もほとんど進んでいません。
今年こそは、学会発表、論文投稿を、それぞれ少なくとも2本はしたいと思っています。
さて・・・
この記事で書いたように今年度は日本語教育の現場に本格的に復帰し、ポルトガル語のお仕事は、前期の1コマの授業のみとなり、翻訳や通訳・企業研修などの仕事などは、ほぼお休みしている状況でした。春休みに仕事がこないかなーとちょっと期待していたりします。(集中でのポルトガル語研修等対応いたしますので、お問い合わせお待ちしております。)
こんな1年でしたが、かねてより分担執筆を担当していた辞書が、先日無事出版されました。2012年に執筆を始めているので、4年ほどかかっての出版です。
辞書執筆は初めてでしたから、迷惑をかけすぎて、名前が載らないのではと思っていましたが、無事、出版できたとのことでほっとしています。
例文・語義の豊富さがピカイチ
持ち運びのしやすいサイズ、語彙の豊富さから、いままで最も使われていた辞書は、
だと思います。
すでに第2版が出版されていて、より洗練されたものとなっています。
語彙も豊富なので、翻訳の仕事にも耐える辞書となっています。
ただ、学部生の時や、ブラジルへの留学時に不満だったのが、例文の少なさ、語義の不適切さ。
例文の多くは、文の形になっておらず、句レベルのみで提示されていました。使用されるコンテクストが分からなかったという記憶があります。
さらに、例文が提示されているのは、動詞と前置詞が中心で、形容詞、名詞については、慣用的な表現が主でした。*1
また、語義については、通例使わない日本語の語彙になっていたり、常用漢字外の漢字が使われていたりして、辞書を引くのに、別の辞書を引くということも、希にありました。
この点を改善したのが、今回の辞書だと理解しています。辞書執筆にあたって、編集の方から指摘されたことから考えると、以下の点に改善が見られます。
・文レベルの例文が豊富になったこと
・形容詞・名詞についても、例が示されるようになったこと(基本語彙でなくても)
・語義が分かりやすいこと(常用漢字を使い、また、日本語も時代にそぐうものになっている)
比較すると分かるその違い
小学館の辞書と白水社の辞書の語義記述をみると違いが分かります。
まずは、白水社の辞書で、基本語彙でないajoelharという単語を見てみます。
ajoelhar [発音表記]
[他]ひざまずかせる
◆ [自]
①ひざまずく.
②屈服(服従)する
◆ 〜-se
①ひざまずく.
②卑下する,へり下る
一方、今回発売された、小学館の辞書を見てみます。
ajoelhar /発音表記/
[他] ①ひざまずかせる. ▶Ele ajoelhou os filhos. 彼は子どもたちをひざまずかせた. ②従わせる. ▶O rei ajoelhava as multidões. 王様は国民を従わせていた.
- [自] ①ひざまずく. ②服従する.
ajoelhar-se [再] ①ひざまずく. ② 服従する.
Ajoelhou, tem que rezar. 乗りかかった船だ。
という具合で、その違いが分かると思います。頻繁に使うわけではない、基本語彙以外にも例文がしっかりあることが分かります。(紙幅の都合から、コンテクストが与えられておらず分かりにくいのが残念ではありますが・・・)
英語では、用途に合わせて多くの辞書がありますが、ポルトガル語ではそうもいきません。この辞書ができたことで、少しは現状を打破できるかなと期待しています。
*1:辞書執筆の際に、ポポ辞典を参考にしたのですが、ポポ辞典でも動詞と前置詞には例文があるものの、形容詞・名詞は例文があるものが少なかったです。