Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

日本事情の授業でディスカッション

ある大学では、日本事情の授業を担当しています。

対象は、学部生ほぼ全員なのですが、実際には来るのは留学生のみです。

日本語は、中上級から上級といったレベルの学生たちです。

日本事情の授業は、その名の通り、日本の文化や、歴史、社会などに関する基礎知識を教える授業で、昨年から担当しています。

前期の授業では、講義と学生によるプレゼンテーションで、基本的な知識を導入しています。

後期は、前半を踏まえ、議論が起きるような日本に関する読み物を読み、日本の実状を知った上で、さらに、それに関連する内容でディスカッションをしています。

留学生のための 時代を読み解く上級日本語 第2版

留学生のための 時代を読み解く上級日本語 第2版

 

 主に、上記のテキストで扱われているテーマを参考に、新聞記事などを読み物としています。

 

背景

こういった取り組みを昨年も行ったのですが、その理由として、以下の点が上げられます。

・聞いたり読んだりするのは理解できるが、自分の考えをまとめて説明するのは難しく感じる人が多い。

・前期の授業でも、学生に意見を求めることはあったが、なかなか発言がでなかった。

・日本に長く住んだり、日本で就職する学生がいることも考えると、日本の社会の実状をしっかり理解し、それに意見をもっておくことは重要であると考えられる。

そのために、以下の目標を設定しています。

・教科書で取り上げられないような、(日本に住んでいる人に向けて)社会の様々な分野について説明したり、意見を述べるような文章を読むことができるようになる。

・社会で議論になるようなことについて、自分の意見を論理的にしっかりと伝えられるようになる。

方法

以下の手順で授業を進めています。

1)授業の前に、語彙を学習しておく。

2)授業内で、まずは、ルビなどなしで、文章を読む。

3)文法事項を確認していく。

4)内容についての理解を問題で確認していく。*1

5)ディスカッションシートに記入する。

6)ディスカッションをする。

ディスカッションシートは、

・自分の意見

・根拠

・その証拠

を記入する欄があります。根拠は3つほど書けるようにしてあります。

ディスカッションをしていくと、違う意見を持つ人から、反論が来ます。

その反論を書ける欄、さらに再反論を書く欄も設けてあります。

クラス内でのディスカッションができたら、シートを宿題として完成させます。

自分の興味のあるディスカッションのテーマについて、シートを参考にしながら意見文を書きます。シートには、既に自分の意見、根拠、反論、再反論が書かれているので、説得力のある意見文が書けます。

効果

今年度は始まったばかりですので、効果を示すことはできませんが、昨年度は、思った以上の効果を出せたように思います。

学期の始めは、感情論になりがちだったのが、学期の終わりには、きちんと根拠を示して説得力のある議論になっていました。

議論の最中についても、最初のうちは、私からも反論をしたりしていましたが、そのうちに、学生たちだけで、議論できるようになっていました。

テーマを述べてシートを渡せば、さっと記入し、10分後には、議論を開始、白熱した議論を日本語ですることができていました。

作文も、極めて説得力のある文章がまとまり、文法や表記の細かいミスを除けば指摘するところはほとんどありませんでした。

自分の意見を述べることは、特に外国語においては難しいところではないかと思います。そのもどかしさから、日本での生活が嫌になったり、一方的に受け入れるしかなくなってしまったりといったこともあるのではないかと思います。

この授業で、自分の意見が述べられるようになったことで、学生たちの受講後の学生生活が豊かになっていることを願わずにはいられません。

改善点

ただ、昨年は、学生が上級レベルにあったため、というのもあったかもしれません。

今年は、以下のようなことを導入し、改善を試みています。

1)語彙を覚えられるようにMemriseを導入。

→語彙がないと議論したくてもできないこともあるため。

2)内容理解の問題を解くだけでなく、自分が読んで理解したことの説明する。

→分かっているかどうかを把握するためと、理解したことを要約して分かりやすく説明する力を付ける。*2

3)読解/ディスカッションの時間を増やす

→受講生が増えたため、学生が話す時間を増やしたいのと、レベルが様々なので、読解に時間をかけたいため。

まとめ

調べたり、プレゼンテーションをすることも勿論大切ですが、日本や世界で議論になることについて、しっかりと自分の意見を述べられることも、重要だと考えています。

この授業の取り組みを、今後も活かして、授業内に導入していきたいと思っています。

 

*1:今期は、これからは、理解した内容を各自簡単にまとめて発表する機会も作ろうと考えています。

*2:研究室での発表などにも役立つことを目論んでいます。