Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

看護学科への学部留学生受け入れを拡大しようとしている大学は、英語圏での取り組みについて読むべきかもしれない

科研費研究の関連で、看護師を目指す留学生のための第二言語教育に関する取り組みに関する論文を読んでいます。

国内における研究は、これまで留学生が多くなかったこともあり多くはないようなのですが、英語圏ではそこそこ論文があります。

その中で、Crawford & Candlin (2012) *1 はかなり網羅的に文献レビューを行っています。

留学生や英語が第二言語の看護師が直面する困難を扱った論文、彼らに対するサポートとその成果について扱った論文など、関連論文が相当数レビューされており、この論文を読むだけで、英語圏における取り組みは、かなり把握できるのではないかと思います。

留学生の受け入れをしている看護系大学はそれほど多くないようですが、今後、看護師不足の中で留学生として看護師を目指す人も増えてくるのではないかと考えられます。

そのような中、英語圏での取り組みは参考になりそうな気がします。

印象に残った部分をいくつか引用します。留学生のレポートを読む人なら納得の一節。

Other students had problems with reference citation and were reported to have copied entire paragraphs from other sources in their scholarly writing because the “words sounded better” (MALECHA ET AL, 2012)

そうですよね。倫理観の欠如ではなく、コピペの方が「良さそうに思える」からこそ、悪気なくコピペをしてしまうんでしょうね・・・。実習のためのレポートなどでもやってしまうことがあると思います。次は受け入れる留学生の入試に関わっている方に呼んで欲しい一節

Also of importance, the literature review (Doutrich, 2001; Pardue & Haas, 2003; Sanner et al., 2002) indicated that English proficiency was highly correlated with success in nursing school.

英語のプロフィシエンシーが 看護師学校における成功に強く関連しているそうです。本学では専門教育が1年次から日本語で行われます。そのことを考えると、入学時に何らかの方法でスクリーニングすることが、学生・教員双方にとって重要かもしれません。そして、日本語の授業を増やして対応すればよいかというと・・・

Starr (2009) reviewed literature and found that additional English classes are often not effective due to simplicity of content and lack of context related to students’ needs; that these students not only need to learn English, but also medical terminology to be successful. 

どうやらそうでないという先行研究があるようです。英語を学ぶだけでなく、医療の専門用語も同時に学ぶことも重要であるという指摘。

先行研究で指摘されていることは、留学生の支援を行っている教職員は直感で感じていることだと思います。

英語圏での取り組みは、第二言語話者が医療の現場での就業を目指してしている留学生を抱えている(これから抱えることになる)大学/専門学校にとって大いに参考になると思います。

Google Documentsを電子黒板?代わりにする

今年の授業で新たな取り組み?として、Google Documentsを使って電子黒板がわりにするということをしています。

本当は、Google Docsを使って学生の答えを共有したいのですが、教室の制約からパソコンが設置されている教室ではなく、本学の医学部以外の学部ではパソコンを教室に持ち込むことが必須とはなっていないためです。

昨年からの課題

昨年度から引き続き、今年も以下のテキストを使い、アカデミックライティングの授業をしています。

ここがポイント!  レポート・論文を書くための日本語文法

ここがポイント! レポート・論文を書くための日本語文法

 

このテキストは、タイトルの通り、レポートや論文を書くための日本語の文法についての日本語学習者向けテキストです。

レポートや論文としてふさわしい形に書き換える問題が豊富に含まれています。

去年は、各自、教科書やノートにやってもらい、回答を口頭で述べてもらい共有していました。

その際、予め正答が書かれたスライドを用意していて答え合わせをしていました。

しかし、これだと、学生の回答は口頭で述べられるだけなので、なぜ間違えていたのかを説明しても他の学生には分かりにくくなっていしまいます。

一方、黒板に回答を書いてもらったり、私が聞いた回答を書いたりすると時間がかかってしまいます。

スマートフォンで回答する

昨年の反省を踏まえ、今年は、以下の方法を考えました。

Google Forms等で予め回答用フォームを作成しておき、スマートフォンで回答してもらい、スクリーンで共有する方法です。

しかし、スマートフォンで回答を入力するというのは厄介で、思った以上に時間がかかってしまいます。だからといって、数名とはいえ、受講生全員分のパソコンを用意することはできません。

Google Docs

そこでGoogle Docsの登場です。

学生とも共有しているGoogle Driveの授業用のフォルダに予めテキストの問題を書いたGoogle Docsのファイルを作成しておきます。

そして、Wordの校閲機能に似た「提案」を有効にし、口頭で聞いた学生の回答を入力します。

そうすると、学生の口頭での回答のスピードと私が入力する時間のブランクなく、すぐにフィードバックがはじめられます。

この方法だと、他の学生が別の回答を述べたときなどにも、メモをしておくことができますし、質問への回答を入力することもできます。

そして、記録が残るので、学生が自宅で復習する際にも、共有フォルダにアクセスするだけでできます。

 

便利なサービスはないものかと思っていましたが、意外とアナログな方法が向いていました。

JSPS科研費 基盤研究(C)「看護を学ぶ留学生のためのライティング教材の開発とその基礎研究」が採択されました!

かねてより看護学部の留学生向け日本語教材の開発を、本学の同僚である加藤林太郎さん、浅川翔子さん(慶應義塾大学に2019年4月より異動)とともに行っていました。それに関連した科研費を申請していましたが、晴れてこの度採択となりましたのでお知らせいたします。

JSPS科研費 基盤研究(C)「看護を学ぶ留学生のためのライティング教材の開発とその基礎研究」

ウェブサイトも作成しました。

www.livreparaviver.net

自分自身が代表となる科研費ははじめてですが、精一杯研究を積み、大学や専門学校における看護の日本語教育への貢献を研究面から行っていきたいと思っています。