Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

社会言語科学会ポスター「短単位 n-gram を用いた看護実習記録の「情報収集」から「アセスメント」への展開 における表現の分析」

2020年3月6日に京都の同志社大学で行われる予定だった社会言語科学会の発表のポスターをこちらに掲載することにしました。
学会員の皆様には、質疑をウェブで取りまとめるとのことですので、そちらを通じて、ご質問がおありの方はお願いできたらと思います。
なお、発表論文集に、この発表の発表論文が掲載されています。学会に参加予定だった方は、発表論文集をご覧ください。(pp.174-177)

ポスター


注意事項

  • 本ポスターの著作権は発表者である山元一晃、浅川翔子、加藤林太郎にあります。
  • 本ポスターの剽窃、改変、出典の明記のない引用は、お断りいたします。

言葉の伝わり方の問題と伝え方の問題と

臨時休校の流れにのって、子どもたちの通う園も極力登園しない、という方針になりました。そのことを知ったのは昨日の夕方のことだったのですが、実は園としては、先週の段階で、そのような方針だったのでは、と思い当たりました。

最初の連絡が来たのは先週末のことで、自由登園になります、とのことでした。

文面は、以下のような内容です。(知っている人であれば園が特定できてしまう内容は伏せています。)

日頃より、園の運営にご理解・ご協力いただきありがとうございます。

昨日安部首相により、新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、全国小中学校に臨時休校を呼びかける発表がありました。そのことを受けて、●●園では下記のように対策をとることに決定致しました。

■ 3月2日(月)〜18日(水)の期間自由登園

8:00〜14:00 無料(朝の預かり/●●●●もいる通常の預かり保育)

14:00〜18:00 通常通り午後の預かり(●●●●保育・通常預かり保育)

給食費 :利用した回数分請求(1食●●円)

※バスによる送迎は行いません

※登園時の注意事項

(以下略)

とあり、その後は行事の中止のお知らせと、卒園式のお知らせのみでした。

呼びかけの中に幼稚園や保育園は入っていなかったこと、自由登園とあったことから、不安な人や風邪気味の子が休んでも欠席にはなりませんよ、ということかと思いました。

給食も利用した回数分請求ということで、休みやすくしているのかな、と単に感じたのです。

昨日は、そう考えた保護者の方が多かったからか、通常保育開始1時間前の時点で、半数以上の子どもが登園していました。

そうしたら、次のような連絡がありました。

保護者の皆様には日頃より、ご理解・ご協力頂きありがとうございます。本日から自由登園です。今回の自由登園は、ご家庭でお子様を見ていただくことを基本としています。お仕事の都合等あり必要な場合にお預かりさせていただいております。お子様の体調管理等よろしくお願い致します。

と連絡がきました。

これを見て、緊急時に必要な情報を、正確に伝えるのは難しいな、と率直に感じました。

最初の連絡に、「お仕事の都合などで必要な場合はご利用ください。」とあれば、そういう誤解も生じなかったのかなと思いました。

 おそらく園側としては「臨時休校の措置による」「下記のように対策をとる」という部分から、当然、上記のような理解をすると判断したのだと思います。

しかし、昨日多くの子どもが登園していたところを見ると、大半の保護者はそうは理解しなかったのだと思います。

「自由登園」、つまり、「来ても来なくてもよいこと」が対策だと判断したのだと思います。これまでの「自由登園」は降雪や台風などによるもので、「登園が難しければ来なくても欠席にはならない」というものでした。

そのようなことから、やはり「風邪等や不安のため登園をしなくてもよい」という園の判断によるものと考えた人が多かったのではないかと感じます。

こういうときに正確に伝えるのは難しいなと思う一方で、どのような読み手であっても誤解が生じないように書くことの大切さを痛感したお話しでした。

※なお、園側を非難するつもりは全くありません。園には、いつも本当に感謝しています。この状況の中、共働きの人へのサポートをしてくださっていることには、感謝しかありません。我が家も近いうちに共働きになるので、今回の一件で、今の園で本当によかったと感じています。

看護学科への学部留学生受け入れを拡大しようとしている大学は、英語圏での取り組みについて読むべきかもしれない

科研費研究の関連で、看護師を目指す留学生のための第二言語教育に関する取り組みに関する論文を読んでいます。

国内における研究は、これまで留学生が多くなかったこともあり多くはないようなのですが、英語圏ではそこそこ論文があります。

その中で、Crawford & Candlin (2012) *1 はかなり網羅的に文献レビューを行っています。

留学生や英語が第二言語の看護師が直面する困難を扱った論文、彼らに対するサポートとその成果について扱った論文など、関連論文が相当数レビューされており、この論文を読むだけで、英語圏における取り組みは、かなり把握できるのではないかと思います。

留学生の受け入れをしている看護系大学はそれほど多くないようですが、今後、看護師不足の中で留学生として看護師を目指す人も増えてくるのではないかと考えられます。

そのような中、英語圏での取り組みは参考になりそうな気がします。

印象に残った部分をいくつか引用します。留学生のレポートを読む人なら納得の一節。

Other students had problems with reference citation and were reported to have copied entire paragraphs from other sources in their scholarly writing because the “words sounded better” (MALECHA ET AL, 2012)

そうですよね。倫理観の欠如ではなく、コピペの方が「良さそうに思える」からこそ、悪気なくコピペをしてしまうんでしょうね・・・。実習のためのレポートなどでもやってしまうことがあると思います。次は受け入れる留学生の入試に関わっている方に呼んで欲しい一節

Also of importance, the literature review (Doutrich, 2001; Pardue & Haas, 2003; Sanner et al., 2002) indicated that English proficiency was highly correlated with success in nursing school.

英語のプロフィシエンシーが 看護師学校における成功に強く関連しているそうです。本学では専門教育が1年次から日本語で行われます。そのことを考えると、入学時に何らかの方法でスクリーニングすることが、学生・教員双方にとって重要かもしれません。そして、日本語の授業を増やして対応すればよいかというと・・・

Starr (2009) reviewed literature and found that additional English classes are often not effective due to simplicity of content and lack of context related to students’ needs; that these students not only need to learn English, but also medical terminology to be successful. 

どうやらそうでないという先行研究があるようです。英語を学ぶだけでなく、医療の専門用語も同時に学ぶことも重要であるという指摘。

先行研究で指摘されていることは、留学生の支援を行っている教職員は直感で感じていることだと思います。

英語圏での取り組みは、第二言語話者が医療の現場での就業を目指してしている留学生を抱えている(これから抱えることになる)大学/専門学校にとって大いに参考になると思います。