Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

Yahoo!の「太陽の国ブラジル特集」に感じる違和感

ワールドカップが近づき、ブラジルが注目されていますが、ブラジルのニュースを見る限り、あまり盛り上がっていない今日このごろみなさまいかがお過ごしでしょうか。

最近なんでもかんでもブラジルに絡めようという魂胆がかんじられますが、Yahoo! JAPANも例に漏れず、こんな特集をしています。

太陽の国ブラジル特集 - Yahoo! JAPAN特別企画

太陽の国ブラジル?

「太陽の国」ブラジル。初めて聞いたんですけど・・・。

Googleで「太陽の国」「ブラジル」とポルトガル語で検索してみたら、トップに出てくるのは「日の出ずる国日本」みたいな結果ばかりです。

ブラジル最大の都市サンパウロは、ケッペンの気候区分では、日本の大半の地域と同じCfa(温暖湿潤気候)。際だって降水量が少なかったりする印象はありません。

ただ、サンパウロは、南回帰線上にあるので、日本よりは日差しは強いです。

が、やっぱり「太陽の国」っていうのは、ブラジルっていったら、ビーチだし、サンバだし(カーニバルは夜だけど)、陽気だし、「太陽の国」って付けといたら多くの人のステレオタイプに合致していいんじゃないかな、的な安易な付け方をしてるような気がします。(スポンサーが「太陽のマテ茶」だからっていうのが正解かもしれません*1ね、でも。)

こういうステレオタイプを助長するような特集は、やめて欲しいなと思ってしまいます(まぁ、彼らは商売ですからね。アクセスが欲しいんでしょう。)

ブリタニカ百科事典だって、

Sao Paulo (Brazil) :: Climate -- Encyclopedia Britannica

Rainfall is abundant, particularly during the summer season from October through March, averaging 56 inches (1,422 mm) per year. Humidity and air pollution combine to form a mist that often hangs over the city.

って書いています。とにかくブラジル最大の都市が、「太陽の国」とはちょっとかけ離れた感じだというのは分かって頂けるかと思います。ただ、サンパウロひとつとってこんなこと言うのも何ですが・・・。

サンパウロの朝の景色。どんより・・・。

ステレオタイプ助長しまくりじゃん

「太陽の国」の違和感に限らず、この特集の至るところで、ステレオタイプの押しつけが感じられます。

簡単ブラジルガイド - 太陽の国ブラジル特集 - Yahoo! JAPAN特別企画

ここでは、「ブラジルトリビア」として、「ブラジル人のイメージを押しつける」行為が行われています。ちょっと酷い・・・。

ブラジル人の特徴みたいな書きっぷり。みんなそうだよって思わせる書き方。

たとえば、

サンバ学校で練習を重ねて本気でショーを競い合う。サンバクイーンは子供の憧れ。 

まるで、ブラジルの人の大半がサンバ学校に行ってるかのような書き方・・・。

サンバクイーンは子どもの憧れ?

ブラジルの子ども達が持ってるカバンは、アニメのキャラクターやら、車やらですよ・・・。

また、こんなことも書かれています。

 

通りすがりの男女が熱いまなざしを交わしあうのもありふれた光景。生涯現役!

何ですかこれは・・・。熱い眼差しを交わしあうって・・・。

熱いまなざしを交わしあうカップルはたくさんいますが、通りすがりの男女が熱いまなざしって。

唯一好感が持てるのは「音楽」

ブラジル音楽案内 - 太陽の国ブラジル特集 - Yahoo! JAPAN特別企画

音楽の特集は、悪くないです。

サンバ・ボサノバ・MPBがデカデカとフィーチャーされているものの、Baile Funkやらも紹介されています。

日本でも有名なヘビメタのアングラやSepulturaなども紹介されています。

ブラジルのロックやレゲエなんかも紹介して欲しかったなあ。いいの揃ってるんだけど。

私が作るなら、これに、Cidade Negraや、O Rappaなんかも混ぜます。 (ま、私が好きなだけですがw)

Nunca Tem Fim

Nunca Tem Fim

  • O Rappa
  • Brazilian
  • ¥1600
Hei, Afro!

Hei, Afro!

  • Cidade Negra
  • Brazilian
  • ¥1500

 音楽については、バラエティに富んでいて、サンバ・ボサノバだけじゃないんだよーっていうところに好感を持てましたよ。

ステレオタイプ的なブラジルのイメージを押しつけること

ブラジルという国が、注目されることは、「私の仕事にも直結しますし」良いことだと思うんです。

でも、ステレオタイプ的なブラジルのイメージを押しつけることで、その枠に当てはまらないものは、目に入らないようになってしまうんじゃないかと危惧します。

・ブラジル人はサッカーが好きだ

・ブラジル人はサンバが好きだ

・ブラジル人は陽気だ・楽天的だ

でも、みんなサッカーが好きなわけじゃないし、サンバが好きなわけじゃない。

「日本人ってみんな盆踊り好きなんでしょ」「寿司が大好きなんでしょ」って言われたら、「いや、そんなことない」って思うと思います。

それと同じことを、しているんだと思うんだけどなぁ。そして、それが、この程度のステレオタイプで済んでいれば良いけれども、

・ブラジル人はパーティーが好き→うるさい

・ ブラジル人は犯罪を犯しやすい

といったネガティブなものになると、急激に暴力性を帯びてきます。

そうして、「ブラジル人」は「怖い」から「ブラジルからの移民の受け入れはやめるべき」「近くには来ないでほしい」といった、言葉の暴力へと発展していのではないでしょうか。

国民性・民族性の押しつけは至るところにある

「民族性・国民性」を疑うこと - Livre para Viver

Yahoo!の特集記事にいちゃもんを付けてみましたが、気付いていないところで、このような記事は巷にあふれているんだろうと感じます。

テレビなんかは、イメージ先行型で編集されているなと感じる番組も多いです(特に民放)。

「ブラジルのイメージ」が制作者の頭にあって、それに合致する映像をピックアップして編集している気がします。

そうして、ブラジルのステレオタイプがどんどん作られていくのだろうなぁ。

心の声(本当は、ブラジルでポルトガル語が話されていること、日本人がたくさん移民した国であること、日本にもブラジルをルーツに持つ人がたくさんすんでいること、をピックアップして欲しい。そうすれば、ポルトガル語の需要が増えて私もウハウハなんだけど。)

*1:インカ帝国で太陽神が崇められていたから、こういうネーミングにしたのだと思っていましたが、そうでもないのかもしれませんね。