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日本語とポルトガル語とその周辺

外国人児童生徒のための就学支援事業「虹の架け橋教室」終了方針に思うこと

こんな記事がありました。

外国人学業支援:子どもら対象「虹の架け橋教室」終了方針 - 毎日新聞

この記事によると、日本語を母語としない外国人の児童生徒を支援する「虹の架け橋教室」の終了方針が打ち出されたとのこと。

日本に住む外国人の子供の学業を支援する国の事業が今年度で終わる見通しだ。2008年のリーマン・ショックの影響で失業した在日ブラジル人の子を想定し、09年度に始まったが、中国やフィリピン、タイなどの子も国の助成を受けるNPO法人の日本語教室で学ぶ。国は役割を終えたとしているが、関係者は「日本のためにもなる」と支援継続を強く望んでいる。 

 ただ、原典にあたることができず、本当のところどうなのかは確認できません。

あくまで方針であり来年も続く可能性もありますが・・・。

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「虹の架け橋教室」とは

日本語教育に関わっている方にも、「虹の架け橋教室」をご存じない方がいらっしゃるのではないかと思います。あまり広く一般には知られている事業ではないと思います。

2009年から始まっているこの事業は、次の目的で行われています。

 景気後退により、不就学・自宅待機となっている外国人の子供に対して、日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための「虹の架け橋教室」を外国人集住都市等に設け、主に公立学校への円滑な転入を支援。
また、ブラジル人等の子供を中心としたブラジル人等コミュニティと地域社会との交流を促進。(http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/todofuken_kensyu/h25_hokoku/pdf/shisaku_02.pdf

3年の期限で行われたものの、2014年まで延期されました。

毎日新聞の記事によれば、当初想定されたブラジル人だけでなく、さまざまな国籍の人が就学を目指して勉強しているとのことです。

先に引用した資料http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/todofuken_kensyu/h25_hokoku/pdf/shisaku_02.pdfによれば、小中や外国人学校への進学は減っているものの、高校への進学支援を得た人数は、年々増加してきている様です。

移民受け入れの議論が過熱している今なぜやめるのか

記事によると、文科省の方は次のように述べているようです。

文科省の担当者は「ブラジルなど南米系出身者の数は減り、彼らの支援にずっと税金を使うことができるかどうか難しい」と話す。 

当初の想定では、ブラジルなど南米の国の出身の生徒を対象としていたようですが、記事では、南米以外の国々の人も対象として、広く就学支援を行っているとあります。

移民を受け入れようとしている今、なぜこのような施策を終了しようとするのか、理解ができません。

日本にやってくる家族が、日本に定住するとなれば、当然、子どもの教育の問題が出てきます。

必ずしも、母語で教育してくれる学校で勉強できる環境が整っているとは限りません。

費用の問題や住む場所の問題で、それがかなわないことも多々あるように思います。

「虹の架け橋教室」のような教室があれば、就学へのバックアップが行われ、公立学校で教育を受けることができ、子どもの教育が保証できるようになります。

この事業が政策として提言されていたころには、さすがの政府も重い腰を上げたかと思っていました。

移民を受け入れるのであれば、子どものことも考えるべき

移民を受け入れるのであれば、子どもの教育のことは、考慮すべき重要なことであると思います。

「虹の架け橋教室」にしろ、公立学校の加配教員にしろ、移民を受け入れたときには想定していなかった、子どもの教育の問題を解決するための施策であったのだと思います。

「虹の架け橋教室」が終了した上で、制度として移民の子どもたちの就学支援をする事業ができるのであれば、分かります。

たとえば、いままでの委託事業のように、お金を補助するという制度ではなく、政府が、一定数の学校ごとに設置するなどが行われていくのであれば、納得します。

しかし、そうでないのであれば、「虹の架け橋教室」の事業を終了する理由が全くわかりません。(何らかの施策が考えられているのでしょうか・・・)

移民を受け入れるのであれば、恐らくいろいろな国籍の方が日本にやってくることになると思います。

もし、次のことが考えられていないのであれば、「その時にまた考えよう」と首相は思っているのかもしれません。

既に「虹の架け橋教室」が6年目に到達して、問題点や改善点が明確になってきたころではないでしょうか。それを洗い出して、維持していく方が、一度やめて問題が出てきたときに改めて制度を再開することの方が税金のムダ遣いな気がします。

移民を受け入れれば、どうしたって、子どもたちの教育の問題は出てくるでしょうから・・・。

それとも・・・

それとも、日本の政府は、外国人には安くて便利な労働力としてきて欲しいけど、不景気になったら帰って欲しい。

変に日本語ができるようになって、定住されたら困るし。

(実際、「子どもが日本で育ってるから、日本にとどまるつもり」という人もいますしね。そういうのを恐れて事業をやめようとしているのでなければ良いですけど。)

みたいなことでも思ってるんでしょうかね。

定住外国人施策については

内閣府の「定住外国人施策ポータルサイト」に詳しく載っています。

定住外国人施策ポータルサイト - 内閣府

また、その中にある内閣府定住外国人施策推進会議  (2009) 『定住外国人支援に関する対策の推進について』をご覧頂くと、2009年にこの制度が始まったことの目的や、当時の定住外国人児童生徒に対する教育施策などが詳しくわかります。

http://www8.cao.go.jp/teiju/suisin/pdf/taisaku_z.pdf