Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

外国人労働者が増えることを前提として自治体や医療機関などにお願いしたいこと

昨日以下のような記事を書きましたが・・・・、 livreparaviver.hateblo.jp 早速こんな速報が飛び込んできました。

5年で最大34.5万人の方が国内に来るということ、そして、留学生ではなく労働者として来るということは、様々な社会的な問題を生み出すことと思います。
そのうちの1点が先日の記事で指摘した日本語教育の問題でしょう。
ただ、先の記事でも述べたように、これから数ヶ月の間に、これだけ多くの人の言語保障ができるだけの制度を整えられるとは思いません。
一方で、これまで外国人が住んでおらずノウハウも何もない市町村に外国人がどんどん住み始め、公共サービスを利用することでしょう。
市役所、病院、図書館、コミュニティセンターなどの現場の人たちの苦労が想像できます。
幼稚園*1や保育園、小学校や中学校などの教育機関*2にも多くの子どもたちが来ることと思います。
そのような中、ノウハウも何もない上記の機関にお願いしたいことは、3点あります。

*1:息子の通う幼稚園にも外国の子どもが数名います。

*2:保育園は厳密には教育機関ではありませんが、便宜的に含めました

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外国人労働者受け入れについての雑感

外国人労働者受け入れ

外国人労働者受け入れの話題が日本語教育業界の界隈でもにぎやかになっているような印象です。
すでに多くの記事が出ているので、目に触れている方も多いことと思います。
この記事によれば、来年の1年間で最大4万7000人の受け入れを見込んでいるとのことで、驚くやらあきれるやらです。
これら国会での議論を受けて日本語教育学会が、「外国人受け入れの制度設計に関する意見書」を発表しています。 *1
日本語教育学会は以下のような提言をまとめているようです。

提言1:
在住外国人との中長期的な共生を見据え、社会統合という観点から日本語教育の在り方を明確に位置づける基本法を制定した上で外国人受け入れの議論を進めること

提言2:
日本語教育に関する質の保証を行うために、国による財政措置を担保すること

提言3:
外国人に帯同する家族(配偶者や子ども等)や日本国籍を有する日本語非母語話者の子どもなどに対する日本語教育支援を充実させること

まさに、上記のことが大切であることはいうまでもありません。しかし、これのために予算を措置し、資格のある人を十分に確保し、長期的な政策を立案することが来年までに可能なのでしょうか。

仮に4万7000人全員に日本語教育を行うことになるとすると、1人あたり100人としても470人の日本語教師が必要です。
今回の政策は時期尚早といっても過言ではないように思います。

使い捨て労働者

2008年のリーマンショックの時に、主に南米から来日し働いている労働者に対し、帰国支援事業が行われました。
これは、「帰国を決意した離職者に対し、一定の条件の下、帰国支援金を支給する事業を平成21年度より実施することとしたもの」*2で、「支援を受けた者は、当分の間、同様の身分 に基づく在留資格による再入国を認めないこととする」とした制度です。
要するに、帰国するための費用は出してあげるが、景気が回復するまで戻ってくるなという制度です。
当時「ご都合主義」「使い捨て」などの批判を散々に受けた制度です。
今回は、日系3世までの方たちへの要件をずっと厳しくしたような制度になっているようです。

日本語教育の問題

家族帯同を原則として認めないとしていますが、一つには、外国人の子供の就学支援をしたくないということもあるのではと勘ぐってしまいます。
外国人の子どもたちへの支援は、自治体任せな一面があるようで、外国人が多い自治体、大企業が立地しているなどで財政基盤がしっかりしている自治体は、大学と連携するなどして、手厚い日本語教育支援を行っているようです。*3
しかし、外国人受け入れ政策というのは、国が主導して行っているものであり、言語保障も国が率先してすべきことだと思います。
現在の日本、特に外国人が少ない地域で、憲法に保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を行うためには、日本語が話せることがほぼ必須ではないでしょうか。
そのために必要な最低限度の日本語を学んでもらう、そのための体制を作ることは、外国人を受け入れる前にすべきことであるはずです。

まずは国内に住んでいる外国人のことが先

外国人に対する日本語教育自治体任せだったり、大学やNPOや主導して行っていたりと、国が本腰を入れているとは思えません。
国内に住んでいる外国人、特に労働者として日本に住んでいる生活者の方への支援により実績を蓄積し、ノウハウができてからでないと、外国人を受け入れても、トラブルが発生し続けるだけだと考えられます。
政府は移民政策であることを認め、現在日本に住んでいる外国人の言語保障、実習制度に関わる問題の解消などをしっかりし、外国人の人が十分な権利を行使し、公的サービスを享受できるようにしてからでないと、国際社会の批判は免れないのではないかと思います。

専門家でもないのですが、ざっと、ここのところのニュース等を見ていて思ったことを書いてみました。

【学会報告】日本ヘルスコミュニケーション学会

だいぶ日があいてしまいましたが、9月14日から15日まで、九州大学病院キャンパスにて開かれていた、第10回日本ヘルスコミュニケーション学会学術大会に行ってきました。 私は、本学の日本語教員の先生、看護学科の先生と共同で行なっている研究の一部を発表してきました。

山元一晃・加藤林太郎・浅川翔子「看護師・看護学生のためのライティングテキストの現状と課題:留学生のためのライティング教育への応用を視野に」『第10回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会プログラム・抄録集』p. 50.

ヘルスコミュニケーション学会は、学際的な学会で、医療系専門職の方、医療系大学の専門教育に従事している方、コミュニケーション研究者、言語(教育)学の研究者等、様々な分野の方が参加しています。 同分野、他分野の方から意見がいただけるいい機会でもあり、また、自分のバックグランドである言語(教育)研究と、医療を関連付けるヒントを貰える学会でもあります。 興味深かった発表は以下です。

  • 土屋慶子ほか「救急医療シュミレーションセンターでのリーダーの依頼行為:受けて割当装置としてのポライトネスと視線配布 」『第10回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会プログラム・抄録集』p. 53.

    救急医療シュミレーションセンター内でのコミュニケーションを分析した研究で、緊急時でありながら、上下関係があり、かつ、多職種が関わるような精度的談話における場面を扱ったものです。リーダーの医師は、同僚には、呼称とポライトネスを用い、研修医にはこれらを用いない傾向があることがわかったとのことでした。ポライトネスへの配慮がないということは想像がつきますが、呼称も入れないというのは意外でした。救急の場面であるから、下の立場の人には同じ対応をするのかと思いきや、研修医と同僚で異なるということ。研究の進展を追わせて頂きたいと思う研究でした。

  • シンポジウム2「医療の国際化に関する諸問題の異文化コミュニケーションの視点からの分析」『第10回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会プログラム・抄録集』pp. 23 - 26.

    医療の国際化について、異文化コミュニケーションの研究者、総合病院の副院長、通訳会社の社員という異なる立場での発表でした。立場によって、国際化への目線が異なるのだなというのを感じました。特に病院の副院長の方は、生活者よりもインバウンドに目は向きがちなのだと思った次第です。インバウンドで来る人も大切ですが、これから少なくとも数年は住んでいくことになる生活者にも目を向けてほしいなと思いました。問題になりがちなのは、生活者ではなく旅行者・短期滞在者ではあるのでしょうが・・・。集住地域かそうでないかの違いにもよるとは思います。通訳会社の方は、生活者/旅行者のどちらにも目が向いていました。 これから、事実上の移民政策により、これからも生活者として、外国から多くの方が来日するかもしれません。そのような中、インバウンドばかりに目を向けていて、日本で生活する人の権利を保障できるような政策が望まれるし、訴えていかなければならないんだろうな、と感じました。

医療の国際化ということで、全体的に大変おもしろかったです。来年は東大とのことで、参加したいと思います。