Livre para Viver

日本語とポルトガル語とその周辺

【研究会報告】日本リメディアル教育学会第14回全国大会で発表しました

先日(8月28日)、日本リメディアル教育学会第14回全国大会(@創価大学)でポスター発表をしてきました。

稲田朋晃・品川なぎさ・山元一晃佐藤尚子 (2018) 「医療系分野で学ぶ留学生のための漢字教科書の開発」(『日本リメディアル教育学会第14回全国大会発表予稿集』日本リメディアル教育学会, pp. 138-139. )

リメディアル教育に携わる様々な分野の先生方が集まる学会で、上記発表では現在開発中の医療系分野で学ぶ学生のための漢字教材について発表してきました。教材の開発過程でも感じていますが、医療の漢字はとにかく難しいものが多いです。直感が全く聞かなかったり、直感で読んでも間違えていたり。医療系専門職を目指す学生を教える身として、この教材を自分でも使って勉強しなければと思っています(笑)。

さて、私達の発表については、この程度にしておいて、感想を。

今回、感じたこととして2点あります。

まず1つめは、リメディアル教育に携わる人の多様性です。

当たり前といえば、当たり前なのですが、医療系の大学で教えている方だけでも、物理学を放射線技師を目指す人や薬剤師を目指す人に教えたり、英語を(様々な分野の学生に)教えたり、日本語でのライティングを教えたりと様々でした。

先生方が苦心しておられるのは、学生が必要性を感じてくれなかったり、それまでに学生が受けてきた教育の内容によって理解が進まなかったり(高校で必修でなく、入試でも求められなかったなど)といったことによる問題の解決でした。

私も大学で日本語教師をしている限り、専門が他にある学生たちの日本語教育を続けることになると思います。たくさんのヒントが、多様な分野の先生方から得られました。

2つめは、ライティング支援の必要性です。神田外語大学の西先生のご発表が印象的でした。

西菜穂子「論文執筆を通じた書き手の成長」『日本リメディアル教育学会第14回全国大会発表予稿集』日本リメディアル教育学会, pp. 128-129. )

 本学は、ライティングセンターのような組織はありません。そのため、ライティングの指導は各学部の先生方に任されています。

一方、日本語教員の側からは、留学生(など)がライティングに困っているという現状を放置するわけにもいかず、学生から申し込んでもらいライティングの支援をするという体制を用意しています。

神田外語大学では、しっかりとした組織としてライティングセンターが作られているとのことで、羨ましく感じました。「結果から示唆されるのは、論文執筆とセンター支援が効果的に結びついた場合、書き手の文章作成に対する自己効力感が高まり、学問的成長へと繋がる可能性である。」(p.129)とあります。組織としてライティングセンターを用意し、専門の先生が対応し、学生が申し込みさえすれば自由に活用できることで実現できたことなのではないかと思います。

日本人の学生にこそライティング指導を受けてほしいと思っているので、本学でも検討されるようになればと思います。(現在の体制では、留学生にしか届かない&日本人学生が来ると手が足りなくなる。)

 

【お知らせ】「医療と福祉の専門職を目指す人のための日本語教育研究会プレフォーラム」を開催します!

2018年12月8日、「医療と福祉の専門職を目指す人のための日本語教育研究会」を開催します。

本学には、医学部医学科、看護学科、理学療法学科、言語聴覚学科、作業療法学科の各学科に、医療の専門職を目指す留学生が在籍しています。

医療・福祉系の大学、専門学校は増えつつありますから、今後も、医療・福祉の専門職を目指す留学生も増えてくることが予想されます。

他方で、経済連携協定(EPA)による看護師・介護福祉士への日本語教育の知見はかなりのものがあります。先日参加した「看護と介護の日本語教育研究会」でも国家試験対策・介護記録の書き方など、その時々のステップに合わせた教材が開発されていることを実感しました。

しかし、これらは、大学や専門学校で学ぶ留学生や、医療福祉専門職を目指す定住者の方などはターゲットとして想定されているものは多くありません。(介護記録の書きかたのテキストは、定住者・永住者を想定しているようでしたが。)

また、いままでEPAによる看護師・介護福祉士候補生のための知見が、どのように他分野他文脈で活かせそうなのかというのはあまり議論されてきていなかったのではないかと思います。

そこで、私ともうひとりの本学の教員が中心となって、「医療と福祉の日本語教育研究会」を開催しようと考えたのです。

現在来年度前半を目指して、上記研究会の立ち上げを計画していますが、その研究会立ち上げるにあたって、プレフォーラムを開催します!

主な内容は、また別の記事で書こうと思いますが、現在は、看護師、理学療法士作業療法士介護福祉士、医師の方に来ていただけることが決まっています。実際に専門職に従事する立場として、お話をして頂き議論していきたいと思っています!

【研究会報告】「看護と介護の日本語教育研究会」教材広場に行ってきました

先日(2018年7月22日)、秋葉原にある首都大のサテライトキャンパスにて行われた「看護と介護の日本語教育研究会」教材広場に行ってきました。

医療系の大学に着任し、看護師や介護福祉士を目指す外国人のための日本語教育の知見を活かせたらと思って行ってきたのですが、収穫は思っていた以上でした。

・看護師国家試験の対策本

看護師国家試験の対策本の発表が2件ありました。本学でも医療系学部に所属する学生の国試への合格は至上命題になっているようです。上記、(留学生向けの)看護師国家試験の対策本は、日本語教育的な知見も踏まえての教材ということで、参考になりました。国試を踏まえた教材づくりというのも大切ですね。国試だけが大事な訳ではないですが・・・。

・介護用語集

介護用語集の発表もありました。

5か国語でわかる介護用語集:英語・中国語・インドネシア語・ベトナム語・日本語

5か国語でわかる介護用語集:英語・中国語・インドネシア語・ベトナム語・日本語

 

山元が今年度より研究分担者になっている科研の代表者を務める三枝先生が共著者になっている本です。

この介護用語集、ぱらぱら見せて頂いたのですが、「サ高住」みたいな略語も載ってるんですよね。国試の勉強で、「サービス付き高齢者住宅」ということばを知っていても、「サ高住」と言われて、即座に、「ああ、サービス付き高齢者住宅のことね」とは普通はなりませんよね。「特養(特別養護老人ホーム)」とか「社福(社会福祉士)」とか、略語を丁寧に見出し語として挙げているのはさすがだなと思いました。私も妻が福祉の専門職なので、それらのことばを知っていましたが、始めて聞いたときは、なんのことやらでしたもん。

・E-learning

「かいごのご」「日本語でケアナビ」などe-learningの教材の発表も多くありました。

今の時代、スマホでちゃちゃっと勉強できるのは大事ですよね。

休憩時間なんかに。

本学の学生も実習などで、本当に忙しそうなので、専門用語のケアは、スマホでちゃちゃっとできるといいのかも。

e-learningの教材が多くできるといいなと思います。

ただ、現状、学部生が使いやすいものは少ないのかなと思うのと、病院ことばみたいなのも勉強できるといいのかな(上記教材にも入っているとは思いますが)、と思います。

・介護記録の書き方テキスト

介護記録の書き方テキストの発表もありました。

市販されている介護記録のテキストは理想的なものであるけど、実際に現場で書くには詳細過ぎるとのことで、実際の現場に即したテキストを作成なさっているとのこと。

私も看護の先生と共同で、看護記録の書きかたテキストを分析してみましたが、やはり同じことが言えました。(この研究は、第10回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会@九州大学、2018年9月15日(土)で発表します)

現場で使うことば、記録を書くのに最低限知っていて欲しいテクニックを網羅したテキストはなかなかないなか、素晴らしい試みだと思いました。

・その他

看護・介護の日本語教育でいろいろな取組をなさっている方々と交流できたことが一番の収穫でした。日本語教師でありながら、介護の知識を得るために介護福祉士の国試に受かったという方、看護学科の先生でありながら日本語教師と共同で教材づくりをしている方、もともと看護師で、現在は日本語を教えているという日本語教師の方など、さまざまな方がいらっしゃいました。

日本語教育、特に、私が関わっている(今後も関わっていくであろう)専門日本語教育の分野では、その専門の方々とともに学際的に研究をしていかなければならないことを痛感しました。

 

【宣伝】

2019年1月を目標に「医療と福祉の専門職を目指す人のための日本語教育研究会」という研究会を立ち上げたいと考えています。そのプレフォーラムを2018年12月8日(土)に国際医療福祉大学成田キャンパスにて開催します。日本語教師だけではなく、理学療法士、看護師、作業療法士、医師、介護福祉士等の専門職の方に来て頂き、医療と福祉の専門職を目指す人の多様化の時代において、必要なことはなにかを議論する場にしたいと思っています。詳細はプレフォーラムのホームページを御覧ください。