MemriseとQuizlet、日本語の授業ではどちらが良いか
今学期から、新たな取り組みとして、語彙を覚えるためにWebアプリを活用することにしました。
以下の2点が主な理由です。
・授業での語彙の習得度が違い、練習時に授業が滞ってしまうことがある。
・スキマ時間に効率的に語彙を覚えて欲しい。
そこで、Web上で使え、かつ、語彙リストをこちらで用意できるWeb上の語彙学習サイト(アプリ)を探していたのです。
条件として、以下の6点を考えました。
(1)語彙リストが自分で用意できること。
(2)教員側で学習者の進捗状況が把握できること。
(3)音声をこちらがわで用意できること。
(4)画像などが入れられること。
(6)(苦手なものや、過去に覚えたものの)反復練習が可能であること。(ただのフラッシュカードではないこと)
(1)〜(2)に関しては、授業で使うため必要なことです。自分が使うだけだったら、これらの機能は不要かもしれません。
(3)は、カナを見れば読み方は分かりますが、アクセントなどはどうしても把握できません。(アクセントを書くのもスマートではない気がしますし。。。)字面だけでなく、耳で覚えることが必要だと考えるためこの機能が必要だと考えました。
(4)は、画像があった方が、意味理解の助けになる場合があるためです。
(5)は、「スキマ時間で勉強できること」を目論んでいるため、寝る前や休み時間、研究の合間にできることが望ましいためです。
(6)も重視しました。Webだからできる機能が欲しいです。
上記6点を考え、取り敢えずQuizletとMemriseに絞りました。
いずれもある程度は無料で使えますが、高機能版は有料となります。
QuizletとMemrise対照表
QuizletとMemriseでできること、できないことの対照表を作ってみました。
|
Memrise |
Quizlet |
(1) CSV(カンマ区切り/タブ区切り)で語彙リスト作成 |
○ |
○ |
(2) 学生の進捗状況の把握 |
○(コースの完了度、ポイント) |
有料 |
(3) 音声のアップロード |
○ |
○ |
(4) 画像のアップロード |
○ |
○ |
(5) 項目の追加(たとえば、「言葉」と「語義」以外に「漢字」などが加えられるか。 |
○ |
× |
(6) 補足の追加(品詞、動詞のタイプなど) |
○ |
× |
(7) 間違えた語句のみの復習 |
○ |
○ |
(8) 過去に学習した語句の復習 |
○(自動) |
△ |
(9) 間違えやすい語句の提示 |
○ |
× |
(10) ゲーム性 |
高い |
低い |
(11) 語彙テストの作成 |
× |
○ |
上記の表で分かりにくいところを説明していきます。
(2) 学習の進捗状況の把握は、Quizletだと有料になります。成績評価に加味するのであれば、必須の機能だと思いますので、お金を払う必要が出てきます。
(5) (6) は結構重要なポイントです。授業のレベルやタイプによっては、漢字の提示をしたり、覚えたりする必要がでてきます。そうすると、「カナ」「語義」「漢字」の3つの項目が必要になってきます。
また、日本語教育では一般的に、動詞は3種類に分けて教えます。これに加えて、形容詞(日本語教育では「い形容詞」ということが多い)と形容動詞(日本語教育では「な形容詞」ということが多い)、名詞などの品詞の情報もあると学習者としては便利です。さらに、動詞の活用を見直しするためにも使えるようになります。また、語義を英語で書く場合、語義の品詞と、日本語での品詞が一致しないこともままあります。
(8)はmemriseに軍配が上がります。忘れたころに、習得済みの問題が出題され、記憶を呼びさましてくれます。
(9)はmemriseの場合、学習者にとって難しい語句を雷マークで表示してくれます。
(10)は、quizletだと、自動的に語彙テストを作成してくれ、プリントもできます。memriseはこれができませんが、授業でテストをする分には、自分で作成すればいいかなという気もしますので、あまり必要のない機能かもしれません。
比較の結果、memriseが使いやすそうだという結論に至りました。
また、以下の記事も参考にしました。
【天野修一 ・ 大学教育センター】 学習用アプリを活用した英単語学習支援の試み | 静岡大学大学教育センター
memriseの欠点
とはいえ、memriseにも欠点はあります。
・ブラウザで見ると、フォントがおかしい。*1(簡体字?の漢字が混ざったりする。小さい「っ」の位置がおかしく、大きい「つ」との判別が難しい。など。)
・有料版への誘導が激しい。*2(特にアプリ)
・1対1対応(語義から言葉、言葉から語義)の場合には良いが、活用などの勉強には使えない。(リストから選んで選択肢が作成されるため、たとえば、「食べる」から「食べた」を答えて欲しいときに、「①食べった」「②食べだ」「③食べた」「④食べんだ」のようにオリジナルの選択肢は作成できない。)*3
・ソフトキーボードは自分で作成しなければいけない。
など の問題が存在します。
特に、フォントがおかしいのは、どうにかして直して欲しいところです。
また、暗記するためのアプリなのだから、自分で選択肢を作れるオプションも欲しいところ。FAQには「いまのところできません」とあったので、今後に期待したいところ。
使い始めたばかりなので、今学期使ってみて、学生達の反応や語彙テストの出来で今後の使用や、使い方の工夫を考えて行きたいと考えています。